ジャケット

スティーヴン・キング短編小説「一四〇八号室」を、
ポゼッション』『すべてはその朝始まった』でおなじみミカエル・ハフストローム監督が映像化。
シャイニング』のような、ホテルの呪われた一室に足を踏み入れたオカルト紀行作家の、
世にも恐ろしい一晩を描いたお部屋系ホラーです。
*スプラッター要素はないんだよ

 

マイク・エンズリンは、オカルトに懐疑的なくせに、幽霊や怪奇現象が噂される全米
各地のホテル・モーテル等に泊まり、そこでの体験を本にして食べてる旅行記作家。
以前は普通の小説家だった彼は、ある出来事をきっかけに変わってしまったのだ。
そんなマイクの元に、謎めいた一枚のポストカードが届く。それはニューヨークにあ
るドルフィン・ホテルのもので「1408号室に入ってはいけない」と書かれていた。
興味を惹かれ、取材のために1408号室に宿泊予約を入れようとするマイク。だがホテ
ル側はその部屋は使えないの一点張り。法律を盾になんとか予約を取り付けフロント
を訪れたマイクだったが、支配人ジェラルド・オリンが現れて、あの部屋には泊まっ
てほしくないとダメ押し。それでもマイクは譲らない。
「幽霊も神も幻想だ、俺は信じちゃいない、いいから鍵をよこせ」と粘る。
とうとうオリン支配人も折れ、ルームキーを手に取り14階へと向かう。
神妙な顔つきでマイクに最後の警告をするオリン支配人をよそに、オカルトを信じて
ないオカルト紀行作家マイク・エンズリンは、1408号室に足を踏み入れるのだった。

 

【楽しめるかも】

  • 『ミザリー』や『シャイニング[TVM版]』、『シークレットウィンドウ』や『悪魔の嵐』といっ
    た、スティーヴン・キング特有の心理系ホラー作品がすきなひと
  • ここ何年かのホラーに多い血まみれ視覚的作品にいまいちのれないひと

【楽しめないかも】

  • 『ランゴリアーズ』や『ドリームキャッチャー』のようなキング特有のクリーチャー系ホラーを
    期待してるひと

 
 
いけ好かないオカルト紀行作家が調子に乗って邪悪な部屋に入り、やり込められる様子はまさに「そら見たことか、ざまぁみろ」ってなもんです。
でもそんないけ好かない男にも悲しい過去があったんですね。

とにかくジョン・キューザックです。彼の魅力が炸裂します。
演技が自然でキャラクターに違和感がなく、観てるこちらは本当にいけ好かない奴だなぁと感じるので、主人公と自分を重ねずに観ていられるのがとてもいい。
この作品は感情移入して観ると、たぶんあまり楽しめないと思います。
主人公マイク・エンズリンはオカルト紀行作家で、彼は自分の体験を本にして出版して読者に読んでもらう人。だから私たち観者は、彼と自分を重ねて観るよりも、彼の体験を一歩離れたところから他人事として観ているほうが楽しめると思うのね。
1408号室の中で、マイクは起きていることや感じたことをテープレコーダー吹き込み、常に取材を続けます。そうすることで仕事をしている自分を意識して、正気を保とうとしているのかな。少なくともこの間は、彼は仕事をしているので、一歩引いたところからマイクを観てその慌てっぷり驚きっぷり絶望っぷりを楽しんでみてください。

前半にサミュエル・L・ジャクソンがホテルの支配人役で出てくるのもなかなかいいです。歴史の長い由緒あるホテルの、なんかうさんくさい支配人といった感じで、説得力があった。
そんな他人とのかかわりも、マイクが1408号室に入って以降はほとんどなくなり、ほぼ一人芝居です。

客室内の重苦しい雰囲気と、キューザックの一人芝居、そしてオカルティックな現象の数々。
とはいえ背筋が凍るといったようなものではないので、そういうのが苦手な人にも安心して観られる作品。
一人の男が自分の信念を揺るがされてしまう、そんな恐怖の一晩のお話。オムニバス映画の二本目か三本目って感じの作品でした。

1408_1洋ホラー好きの皆様に今さら言うまでもなく、西洋において「13」はいわゆる「忌み数」で、ホテルに13階や13号室というのがありません。
12階の次は12b階だったり14階だったり、13階を従業員専用フロアにして客室用エレベーターに13階表示をしていなかったり、13号室の場所には製氷室や機械室を割り当てていたりする。

「13」が「忌み数」である由来はいくつか説があって、ホラーでは「13日の金曜日にイエスが処刑された」とか「ユダが最後の晩餐で13番目の席についていた」とか「サタンが13番目の天使だから」っていうのが定番だよね。
ご存じのとおり聖書にはイエスの処刑日に関する記述は一切ないので特定もできないし、ユダはっきりと「12人の弟子の一人」だと記述されてるので、どっちも俗説なんだけど、近代においてはとても有名な説。サタンが13番目の…っていう説に関しては、北欧神話のラグナロクの原因になったロキの逸話(12神が祝宴していたところに招かれざる13人目の客としてロキが乱入した)が土着神話として伝わっていたところ徐々にキリスト教化された時に結び付いたとかなんとか。

と、いうわけで、「13」はオカルト的にとっても好奇心をあおってくれちゃうわけ。
この作品に登場する「1408号室」も、「13」を連想させることから主人公マイクの心をとらえます。
「ホテルの14階」というだけでも「13階」を想像させるのですが、そう単純じゃないわけで。「14階」というだけでは「12b階」があったり、「表示してないだけ」だったりする場合もあるからね。そこはそれさすがにオカルト紀行作家のマイク、「1408」のなかにある「13」の存在に気が付くのです。
いいよね、こういう細かい描写ちょうすき。そんな回りくどくしなくてもいいじゃない…と感じるひともいるかもしれませんが、やはりオカルト部屋をいくつも回ってきた主人公が、数あるオカルトスポット紹介のファンレターの中から興味を抱くには単、なる「14階」じゃ弱すぎます。きっと「14号線沿いのモーテルの14号室」や「14番地のホテルの1414号室」なんて腐るほど泊まってきたことでしょう。ポストカードに書かれた「1408」のなかにちょっと捻って隠れていた「13」だからこそ、マイクは興味をもったわけです。

1408_2散々脅されて、泊まったってどうせ何も起きない。幽霊なんて存在しないんだから。ただ、何十人もが不可解な死を遂げた部屋でネタにはなるし、ここまで宿泊拒否されると逆になんとしても泊まってみたいじゃないか。はいはい、1時間ももたないだなんてよく言うよ、どうせ大したことないんだろ、ほっといてくれ。

そうして立ち入った部屋で、じわじわと襲ってくる恐怖。
あいつに言われたとおり泊まるのやめときゃよかった!! …なんて、後悔してももう遅いんだよね。
宿泊客の心の闇を暴き、しつこくしつこく責め立てる邪悪な部屋。ついには宿泊者の心は壊れ自ら死を選ぶ。
そんな恐ろしい部屋は、マイクの心の奥底にある傷も容赦なく抉る。不安と絶望の繰り返しに追い込まれるマイクの精神。これでもかこれでもかというくらいの悪意に、観てるこっちまで消耗してきてしまいます。
じっくりじっくり、マイクと一緒に追い詰められていきます。
…もしくは、追い詰められていくマイクがおもしろくてなんだか楽しくなってきたりもします。

序盤からのサスペンス調な展開は、部屋に入ってから息を潜め、その後は重苦しい閉塞感が続く。そしてやり尽くしたかなーってところで、ラストに向けてカタストロフ的な展開を見せる。
幽霊なんて存在しないと信じるマイク。彼がその信念を揺るがされ、存在を認めたとき、いったいどうなってしまうのか…。
一見の価値ありだよね。

1408_4原作は30ページ前後のとてもあっさりした短編小説。それをここまで膨らませたのはお見事。脚本はTV映画やドラマで活動しているマット・グリーンバーグ。そして『ラリー・フリント』でGG脚本賞を受賞したラリー・カラゼウスキースコット・アレクサンダーのコンビも共同執筆。

グリーンバーグは、現代に蘇った太古の竜が人類を滅亡の危機に陥れる『サラマンダー』や人間に嫉妬した天使が地獄から蘇って戦争しようとする『ゴッドアーミー/復讐の天使』の脚本にもかかわっているひと。そんな彼ですが『キリング・ボックス』という西部劇ホラーの脚本を書いてます。アフリカからやってきて洞窟に閉じ込められていた悪霊が、南北戦争のさなかに南軍の連隊副官に乗り移って人間に復讐するお話で、スプラッター描写はなく、じっくりとしたつくりの異色ホラー・ウエスタンだったわけなのだけれども。まぁ、それほど面白いわけでもない作品だったのですが、そういう性質の作品づくりをしてきた人なのでキングの心理ホラー特有の、ねちっこさと閉塞感と緊迫感あふれる心理描写がうまく表現できたんだろうと思う。
そこに、シニカルさのある笑いとせつなさで定評のあるカラゼウスキーとアレクサンダーコンビが絶妙なスパイスを加えているわけですね。特に部屋に入って以降の主人公の様子には、随所にユーモアが潜んでいます。

ハフストローム監督とも相性もよかったのかもね。じつは、当初はイーライ・ロスが監督することになってたのを、キングが「彼を監督にすると、作品が血まみれになってしまう」って却下したんだとか。
ロスは、視覚的で痛覚に訴えるグロ描写が得意だけど、グロと恐怖ってまた別だもんね。で、お鉢が回ってきたのがミカエル・ハフストロームでしたと。これってすごく正解だと思う。ハフストロームってスリリングで緊迫感ある演出がすごくうまくて、この作品でもそれが上手く作用してる。

1408_3
さらに、個人的に激押しなのが撮影監督のブノワ・ドゥローム
ブノワの特徴はなんといっても、コントラストの強い、ビビッドな画。そして透視図法を意識させる構図と、画面のなかに2人以上の人物を置いたときの対比構図といった、直線的なイメージ。『1408号室』のような、室内を中心に展開する物語にはとにかくもってこいの、こだわりの撮影監督です。今回も、郵便私書箱やキーボックスから中身を取り出す様子や、廊下を歩く様子など、孤独を感じさせる印象的な画面が冴えてました。中田秀夫監督の『チャットルーム』もブノワが撮影監督を務めてるんだけど、部屋系作品として比較してみるとおもしろいかも。

John Cusack is Mike Enslin in Mikael Håfström's 1408これら物語のすべてを最後まで引っ張るのがジョン・キューザック。
ほぼ彼の一人芝居を観るようなこの作品ですが、とにかくその演技がすごい。見ごたえがあります。彼は本当にすばらしい役者ですね、撮影のあいだ常にこのテンションで演技をするのは相当大変だったに違いない。

注目は高層階のビルの外壁をつたうシーン。クラシカルな恐怖映画では定番の高所の壁づたい。この作品では本当の恐怖はその先にあるわけなのだけど、キューザックのその迫真の演技。こっちまでひやっとしちゃったよ。

さて、人間の心の闇が引き起こす「恐怖の可能性」を描いたようなこの作品、中盤の展開に息苦しくなりつつも、かなり楽しんで観られました。

ただし、観終わってしばらくはカーペンターズが脳内再生していてしぬかとおもったけどね。
 
 

Written by はるひさ[@haruhisa1212](部長)
2007年10月7日 ブログ掲載

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1件のフィードバック »

  1. るちお より:

    久しぶりの更新だ!1408号室大好き(*´ω`*)
    ギリギリと追いつめられていくキューザックの演技、見事でしたね。

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