墓地裏の家HDリマスターDVD ジャケット

ホラーマニアックスから発売された「墓地裏の家HDリマスター」DVD。相変わらず素晴らしい画質。VHS版のイメージを踏襲したジャケットデザインも気取りがなくて潔い。


 

比類なき汚さ・グロさ・エゲつなさ!

「墓地裏の家」は大人の残酷おとぎ話

 

地下室に、ナニか恐ろしいものがいる…。

そんな、身近な場所に潜む恐怖をテーマに、これまで多くの映画が作られてきた。
時に、それは床下だったり、天井裏だったり、クローゼットの中だったり…。 “普段生活してる家の中に、ナニか得体の知れないものが潜んでたら?”というのは、和洋問わず、誰しも一度は思い描く恐怖なのだろう。
近年では、ギレルモ・デルトロ監督が『ダーク・フェアリー』で、地下室に潜む妖精の恐怖を描いて話題となった。『ダーク・フェアリー』の恐怖の源は歯の妖精だったが、映画によって、潜んでいる“ナニか”も多種多様だ。
時にそれは、大グモだったり、大蛇だったり、鎖につながれた奇形だったり、異次元の魔物だったり、得体のしれないクリーチャーだったり…。

だが、この「墓地裏の家」に登場する“ナニか”ほど、本当にいたらイヤなものもないだろう。
もうね…。『イヤ度』『お願い出てって度』では、他を寄せつけないスーパーヘビー級クラスの勘弁して欲しさ。
何せね、引っ越し先の地下室に潜んでいたのが…。

過去に非道な人体実験を繰り返し―
百年経ったいまも人体の部品を求め―
来訪者をグッチャベッチャに惨殺しては―
地下室の片隅で奇怪な実験を続ける―
腐乱した気狂い博士のゾンビ―

……。

 

ね?

聞いただけで、雨の日、裸足で公園の便所に駆け込むハメになったあげく、使用済みティッシュのかたまりを素足で踏んづけてしまった時のような、何ともいえないゲンナリした気持ちになりますでしょ。
デルトロの歯の妖精だって、これにはさすがに、「俺たち、そこまでキモくない」とドン引きするに違いありません。

ホラー映画界・地下室部門(?)広しといえど、ひときわ異彩と異臭を放つ、そんな彼の名前は“フロイトステイン博士”。
かの名作怪奇、フランケンシュタインにちなんだであろう名を持つ彼は―。

ジェイコブ・T・フロイトステイン博士

ジェイコブ・T・フロイトステイン博士のご尊影。
捕まっているのは、物語の主役ボブくん。

19世紀、永遠の命を研究テーマに、惨たらしい人体実験を繰り広げ、ついには医学界から永久追放されてしまった狂気の天才医師なのだ。

数多の人命を犠牲にした末、とうとう念願の、永遠の命を得る方法を見つけだしたフロイトステイン博士。

そんな博士のお宅拝見を描いた映画、「墓地裏の家」の物語はこうだ。

自殺した同僚の研究を引き継ぐため、荒れた墓地の中に建つ一軒家に引っ越してきた学者
のノーマン。同僚は自殺する直前、ここで愛人を惨殺した。
そんな、いわくつきの家で、引っ越し直後から一家を襲いはじめる奇怪な出来事。
息子のボブは、近くに住む謎の少女メイから、「ここに来ちゃダメ」とくりかえし警告を
受け、不動産屋の紹介でやってきた子守りのアンは、どこか曰くありげ。
地下室の扉は固く閉ざされ、中の様子を見ようと鍵をこじ開けたノーマンは、こうもりに
襲われてケガをする。家のそばの林には、“メアリー・フロイトステイン”という女性の
墓碑が…。
やがて、埃まみれの家を掃除していたルーシーは、カーペットの下に墓石が埋め込まれて
いるのを発見する。
墓碑銘“ジェイコブ・T・フロイトステイン”…。
あまりの気味悪さにルーシーはすっかりノイローゼになり、ノーマンは、寒いこの地域で
は昔から家の中に墓を作ったのだと説明して慰めるが、
結局、不動産屋に退居を申し出ることに。
しかし、一家の留守に家を訪れた不動産屋の女は、何者かの手によって忽然と姿を消し、
子守りのアンも地下室で首を切断されてしまう。アンが殺害される光景を見ていたボブは、
必死で何者かの存在を母親に訴えるが、改めて見にいくと、そこには死体どころか、血の
あとすらない。一体、この家で何が起きているというのか。
家にまつわる血生臭い秘密―。地下室でうごめく恐るべき“ナニか”の正体とは―。

一方、家の秘密を独自に調べはじめたノーマンは、同僚が自殺した図書館で、肉声
入りのテープを発見する。
そして明かされる驚愕の真実―。
あの家は何と、19世紀に惨たらしい人体実験を繰り広げ、医学会を追放された狂気の医師、
フロイトステインの屋敷だったのだ。
不死の研究を行っていた博士は、腐敗したおのれの肉体を、殺した人間の部品で補いなが
ら、あの地下室で百年以上に渡って生き永らえていたのである。
同僚の愛人を殺害したのも、博士の仕業だった。ノーマンは急いで家へ向かうが、その頃、
地下室に閉じ込められた息子ボブに、博士の血塗られた手が伸びようとしていた。
連れ去られたボブを追って、地下室の奥へ向かったノーマン夫妻―。
そこで目にしたのは、この世のモノとは思えぬ凄惨極まりない地獄絵図だった。
を落とされ、を裂かれ、天井から吊るされ、バラバラに解体され、ありとあらゆる惨
たらしい“手術”を受けた死体、死体、死体―。子守りのアンの首も、不動産屋の死体もそ
こにあった。

息子を救うべく、歩く腐肉と化したフロイトステイン博士に立ち向かうノーマン。
だが、逆に喉をむしり取られて絶命する。
立ちはだかる博士から逃れようと、ルーシーはボブとともに、もう一方の階段へ。
階段の先は、床に埋め込まれたあの墓石不動産屋の女が踏み抜いた穴を押し広げ、何と
か脱出を試みるが、あまりにも重く、わずかしか隙間が開かない。
ついにルーシーまでが博士の手にかかり、ひとりとなったボブは、懸命に母親が広げてく
れた隙間に体を滑り込ませるが、あまりに狭くて身動きが取れない。ゆっくりと迫り来る、
腐肉の塊フロイトステイン。
その時だった。
突如、上から差し込まれた小さな手が、物凄い力で墓石をこじあけ、ボブを地下室から引っ
ぱり上げた。助けたのは、謎の少女メイ。
「さあ、行きましょう」
そう言って、ボブとメイの手をとったのは、博士の妻として墓碑に記されていたメアリー・
フロイトステイン、その人だった。まるで、この家で殺された子供達の魂を導く精霊のよ
うに、メアリーは二人を連れ、墓地裏の家をあとにするのだった。

フロイトステイン実験室

血の臭いすら漂ってきそうなグロ汚さの、フロイトステイン実験室。
この作品のムードが一枚で理解できる非常に良いスチルだ。

母親役を演じるは、カトリオーナ・マッコール
イタリアンホラーの世界では、アルジェント組のダリア・ニコロディフルチ組のカトリオーナ・マッコールと並び称されるほど。
今作でも、彼女は派手に叫びます。

ウォルター・リッツァートが奏でる、パイプオルガン風の音色を多用したメインテーマも、無駄に荘厳で物悲しく、オープニングやエンディングをこれでもかと盛り上げる。

そしてフルチ映画ではいつものことだが、相変わらず伏線は一切回収されない。謎は謎のまま、投げっぱなしで終わる。この辺が、『難解過ぎる』『訳わからん』と評される一番の原因だろうし、そういった感想も当然だと思う。人によっては怒りだすだろう。
けれど「墓地裏の家」は、脳内補完しながら観ると、なかなか楽しい作品でもあるのだ。そもそも、この物語自体、ひどく血生臭くはあっても、子供を中心に据えたおとぎ話なのだから。
“家の地下室に怖いものがいて、夜になると襲ってくる”
描きたいのは、その一点のみ。
あとは、ストーリーも人物設定も、何もかもが、不気味さや怖さを引き立てるための、お飾りに過ぎない。謎の少女メイ周辺の描き方が、やたらメルヘンタッチなことも、それを如実に表している。
僕が思うに、フロイトステイン一家は、それぞれが別の形で永遠の命を手にいれたのではないだろうか。
博士は、研究の末に手に入れた肉体的な不死―。
博士に手にかけられたであろう妻と娘は、未来永劫、家の周囲にとどまり、訪れる者に警告し続ける精霊としての不死―。
これは僕の勝手な推測で、根拠となるものは何もないけれど、そんな風に考えると、残酷おとぎ話としての輪郭がはっきりしてきて、かなり深読みした映画の楽しみ方ができるのだ。
万人にはオススメしづらいが、あえてオススメしたい「墓地裏の家」の楽しみ方、あなたもいかがです?

まあ、回収されない伏線については、脚本のサケッティと、監督のフルチの目指す方向性が違ったという、製作サイドの都合が大きく由来してるんですけどね。幻想的カオスを物語に組み込みたいサケッティと、起承転結のあるストーリーを描きたい職人肌のフルチ。脚本家と演出家が真逆の方向を向いているのだから、ストーリーが地割れを起こすのも当然のこと。その混乱っぷりは、曰くありげな子守り、アンの造形にもみてとれる。
不動産屋の女が殺された次の日、アンは家族の目に触れないよう、床の血を洗い流し、殺人の証拠を隠滅。夜中には、こっそり地下室の扉を開けようともするし、行動がいちいち怪しい。だが、映画を通して、その辺の説明は一切ないまま、彼女自身も犠牲者となってサクッと退場してしまう。おそらくアンは、この家の秘密を家族に知られないようにするため送り込まれた、不動産屋の回し者だったのだろう。ひどい事故物件を売りさばくための工作員。
しかしながら、不動産屋回りでそういった謀略ドラマが展開することもなく、ひたすら全編を支配するのは、清々しいまでの伏線の無回収!これぞフルチ流ともいうべき無責任演出!

ハイ!まっ赤!

ハイ!まっ赤!
画面中、ズルズルのベチョベチョのグッチャグチャ!
ゴアシーンはけして多くはないのですが、その分、大変高濃度となっておりますので、ご注意ください。

 

そして最大の見どころは、みなさまお待ちかね―。
フルチといえばゴア!
ゴアといえばフルチ!
数はひかえめながら、とことんしつこい残虐シーンが、もうええっちゅうくらい画面上に展開します。
手口もネチネチいやらしく―。
脳天をハサミが貫通し、尖った鉄棒が全身をぷーすぷーす。女のノドはナマスに刻み、男のノドはもぎり取る。聞くより見た方が話が早い。
 

とまあ、愛憎入り混じりながら長々と紹介してきました『墓地裏の家』―。
フルチの作品としては、いささかパワーダウンしているようにも見えますが、お化け屋敷モノとしては出色の出来。ギレルモ・デルトロ監督がリメイクしてくれたら、きっと凄い映画になるに違いない。
さあ、足りない部分は自分の脳で補って、スミからスミまで楽しもう。
あなただけの「墓地裏の家」が、画面の中に見つかるかもしれませんよ。

腐臭漂うフロイトステイン博士の呻き声と一緒に―。

メイちゃん

稀代の事故物件を心配そうに見つめるメイちゃん。


 

《墓地裏の小ネタ》

  • 博士のフルネームは「ジェイコブ・テス・フロイトステイン」
    リマスターされたDVDではフロイトシュタイン、VHS版ではフロイトステインと字幕表示。
  • 墓地裏の家のフロイトステイン博士が悪魔の人体実験を繰り広げていたのは19世紀。
    ビヨンドの画家シュワイクが近隣住民のリンチにより死亡したのも19世紀。19世紀は実は、地獄の門が開きはじめた悪夢の時代だったのかも。
VHS版のパッケージ

VHS版のパッケージ。怪奇色の強いデザインがムード満点。

 

墓地裏の家<未>(1981)
[原題:QUELLA VILLA ACCANTO AL CIMITERO]
[英題:THE HOUSE BY THE CEMETERY]

上映時間:89分
製作国 :イタリア
監督:ルチオ・フルチ
製作:ファブリッツィオ・デ・アンジェリス
脚本:ルチオ・フルチ,ダルダーノ・サケッティ, ジョルジオ・マリウッツォ
撮影:セルジオ・サルヴァティ
特殊効果:ジノ・デ・ロッシ
特殊メイク:ジャンネット・デ・ロッシ
音楽:ウォルター・リッツァート
出演:カトリオーナ・マッコール,パオロ・マルコ,ジョヴァンニ・デ・ナヴァ,
アニア・ピエローニ,ダグマー・ラッサンダー,カルロ・デ・メイヨ, ダニエラ・ドリア

 

Written by るちお[@LucioFulci74](副部長)

 

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